統合失調症についての本おすすめ【統合失調症の一族 遺伝か、環境か】
統合失調症は脳の病気の1つで、「妄想」や「幻覚」などの症状が有名です。
日本では約80万人の罹患者がいるといわれており、おおよそ100人に1人弱の方が発症する可能性があります。意外と身近な病気ですね。
学校や企業など一般社会においても、服薬などの治療を受けながら働いている方が多くいらっしゃいます。
今回は、統合失調症への理解が深まる1冊の書籍をご紹介します。
「統合失調症の一族 遺伝か、環境か」
この本は、12人兄弟のうち、半数の6人が統合失調症を発症した家族のノンフィクション小説です。
同じ遺伝子をもち、同じ両親に育てられた(同じ環境で育った)兄弟たちの中でも、発症する者としない者が半数。
「兄弟が発症したのだから、自分も将来的に病気になるかもしれない」
「次は、いつ、だれが発症するのだろう」
「家族をどう支えていったらいいのか」
など、家族はさまざまな不安の中で生きていきます。
物語は家族の母や末娘の視点で描かれ、発症者の家族としての目線や苦労が鮮明に表現されており、「支援者の立場で何ができるだろう」と考えることが多いです。
また、第二次大戦後~1970年代・アメリカを舞台に、薬学治療やサイコセラピーなどの治療の描写も多く、読者はアメリカ精神治療史に触れることができます。
精神疾患の原因についても、優生学運動の隆盛、その反省・反動として精神分析の流れを組む心理学的要因探求、薬物療法の時代を経て、遺伝因子研究へ。
とても勉強になります。
統合失調症患者やその家族の考え方、原因究明や治療方法の研究とその歴史など、幅広く知識をつけることのできる良著です。
なお、統合失調症の発症の原因は、現在でも正確にはわかっていません。
遺伝と環境の両方が影響し、他の精神疾患を含む発症しやすい因子を持っている人が、仕事や人間関係、人生の転機などのストレスを受けることで発症するのではないかと考えられています。
身近にある病気であるからこそ、イメージや思い込みを持つのではなく、適切な情報を調べ、身につけることが大切です。
そのためには、単に病気の概要について調べるだけでなく、発症者本人や周囲の方の状況や気持ちを想像できるよう、多角的な情報を知る必要があります。
エッセイやブログなどを読んでみるのも良いでしょう。
参考文献
ロバート・コルカー『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』
(早川書房・2022年)
厚生労働省 メンタルヘルス 2023.1.6
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_into.html