インタビュー
明るい、楽しい、活気がある障害者の職場ってあり?

頑張りすぎで病気に…
「この会社で働きだしてぐんぐん病気もよくなっている」というC.Oさんは、志賀高原のふもとの山ノ内町の出身。いまは長野市で一人暮らしをしながら仕事をしている。生まれながらの頑張り屋さんで、“うっかりしてると、ついつい頑張りすぎてしまう”という性分だ。その頑張りが度を超えて、病気になってしまった。
以前の仕事はウェブデザイナー。大都会東京の真ん中で24時間仕事漬けだった。
「毎日帰りは終電でした。それで朝も普通に出社して、自分ではいいと思ってやった仕事にダメ出しされて、納期もあって……。才能があったらよかったんでしょうが、私には才能がなかったので、消耗してしまったんです。」
病気になった。精神の病気だった。
故郷に戻り、最初はグループホーム。それから授産施設へ。その授産施設でも素晴らしい出会いがあり、今の会社とも巡り合った。
「身体障がいの方はけっこう仕事があるんですが、精神の方が働ける所って本当になくて……。ハローワークでここを紹介されて、来たんです。」
この会社との出会いが、C.Oさんにとってはどんな名医よりもすばらしい「薬」になっていくとは、この時には予想もしないことだった。
1年間働いて元気になるという奇跡
入社は2011年6月。働き始めて1年3ヶ月がたった。 C.Oさん、綜合キャリアトラストに入る前は、仕事をしたら病気が悪くなるんじゃないか、と思っていた。正直、障がい者の職場はもっと暗くて、元気がなくて、必要以上にやさしくされているというイメージだった。それが……。
「明るいし、活気があるし、それに仕事には厳しいんですよ。それがうれしかったですね。」
他の部署の人がオフィスにみえると「いらっしゃいませ!」とみんなで言い、お帰りになる時は「ありがとうございました!」とみんなで言う。
「お店みたいなんですけど、これがいいんですよ~!」
そして、仕事で失敗したときには本気で怒られる。障がい者だからと甘やかされるのではなく、きちんと注意してくれるところが、C.Oさんにはとてもうれしい。一人前の人間としてみてもらっている、という感じがするからだ。
それでいて、病気への理解もちゃんとあるので、疲れた時や、しんどいときは休みが取れ、療養に専念できるところも大助かりだ。他の会社では簡単には休めないな、と思う。
「会社に入って本当に良くなったね、と医者に言われます。こうして働けていること、家族もほんとにびっくりして、とても喜んでいます。」
仕事をしていたら病気もよくなってしまったC.Oさん。病気の時の状態を知っている人たちから見たら、彼女は奇跡の存在でもあるようだ。
達成可能な目標が見えてきた
C.Oさんの今の仕事は、契約書の発行。最初のころは、スタッフさんの情報をパソコンで入力する仕事だったが、セクションが変わって今の仕事になった。昔は体力もなく、勤務時間も6時間で、休みもしょっちゅうとっていたけれど、今はなんと8時間勤務!
「前は疲れてしまって、へとへとになってました。家に帰るとバタッと。それが今は家に帰ってから料理していますから。1年間勤められたことは、すごいことだと思います。」
C.Oさんが今、気をつけているのは突っ走りすぎないこと。自分の体調とバランスをとりながらコントロールしていくことが大切だ。でも、それも小さな石を積み重ねるように時間をかけて、なんとか上手にできるようになってきた。
「将来は障がいのある人の就職を支援する施設、スキルアップする施設で働けたらいいな、と思っています。それが目標にあるから頑張れているんだと思います。」
人のために働く……そんな目標が見えてきたC.Oさんだ。
最近、“気を抜くと突っ走ってしまう” C.Oさんの性分を治すため、友達から進められて将棋をやりはじめた。
「次、この人はどう打ってくるのか、と考えるのがおもしろいんですよ。」
そのうちすごい女流棋士になりそうな、ただならぬ予感が漂ってくるC.Oさんだ。